遊べるweb会議 システム
第一に、停止したら不具合の暫定処置を行い速やかにラインを稼働させること、第二に、二度と同じ不具合でラインを停止させない恒久処置をこれも速やかに行うことが条件になることが失敗の経験からわかってきた。
稼働率を下げないためには、不断の改善活動が求められる仕掛けになっている。
今までは、組み立てライン終了後にすべて手直しをしていたから、不具合を発生させた要因に手を打つということはなかった。
そのためKの工場に改善力は必要とされず、育たなかった。
改善力がないところに「異常発生でラインをいったん停止」という仕組みを導入するとすぐに中止に追い込まれる。
その後、この二つの条件をクリアすることにより、Kの工場は六カ月後には再度この仕組みを軌道に乗せることができた。
三番目に、多種少量生産型の日本が勝てない要因として固定費の問題がある。
大量生産の優位性は製造原価における固定費を低くすることにある。
そこでO氏は「固定費をゼロにする」というアイデアを考えた。
まず手がけたのは、工場に存在する管理部門に目をつけ、「管理部門をなくせ」という具体的な課題を打ち出した。
「働き」と「動き」のとらえ方で言えば、工場で付加価値を生み出す働きをしているのはラインについて加工をしている作業員のみである。
それ以外の人員は、O氏の考えによれば「動き」をしているムダな人員ということになる。
アメリカの工場では結構ムダな管理部門の人員を抱えているに違いない。
Tの工場で管理部門をなくせればアメリカに追いつく道が開かれる。
ここから管理部門の生産計画に頼らず、現場の自律的制御で在庫を不要とする「かんばん方式」がつくられていく。
「言い出し屋」が変革を主導する「言い出し屋」にはかなり資質が要求される。
Kはこの役割を二十年余り実践してきた。
その経験から、言い出し屋には「カン」「コダワリ」「ドキョウ」が必要であると言える。
「カン」とは、言い出すタイミングを指している。
一九五○年代のTは、世界ナンバーワンの大量生産型のアメリカにどうしたら互角の勝負が挑めるかに真剣に取り組んできた。
社長のT氏が示した「三年でアメリカに追いつけ」というスローガンから始まったTの変化への活動は、「こうすればアメリカに追いつけるぞ」という常識はずれだがなんとかなりそうな課題ヨンセプト)にまでO氏が落とし込んで提示し、それをいかにして可能にするかの悪戦苦闘の連続で展開した。
このように企業が変化を始めようとした場合、その変化のスタートには必ず具体的な目標を提示する言葉(コンセプト)を提起できる人材を必要とする。
本書ではこのような人材を「言い出し屋」と呼ぶ。
Tの革新への動きはO氏という言い出し屋の存在から始まったと言える。
無関心なときに言い出しても意味がない。
タイミングをはずすと「出るクイ」として打たれかねない。
早すぎても遅すぎてもダメ。
「半歩先」を感じさせるテーマを見つけ、みんなが気になってきているタイミングにそのテーマについて提案する。
みんながなんとなく不安を感じ始めた頃に「こうしようじゃないか」とうまいコンセプトを言い出すことで変化への行動はまずはスタートする。
二つ目は「コダワリ」である。
テーマは「可能かもしれないが、おそらく不可能だろう」という内容である。
普通の社員の軸足は「不可能だろう」というほうにのっている。
言い出し屋はたとえしぼみ始めても、「なんとかできそうな」コンセプトをつくり出すことにコダワリ続けることが大切である。
個人の興味だけではなかなか持続できるものではなく、ある種の「使命感」を持つことが要求される。
それを支える「経営マインド」は不可欠である。
三つ目は「ドキョウ」である。
言い出し屋が「こうしようじゃないか」と呼びかけると、必ず「そんなことはとても無理ですよ」という反論が出る。
Kの経験によれば、「必ずできるに決まっている」と答えると、「どうして部長はそう断言できるのですか」という議論になる。
K自身も内心ではみんなと同じように「とてもできないだろうな」と感じているが、「ダメなら元の形に戻せばよい」とも考えている。
万が一、トライ中にトラブルが発生した場合のバックアップの仕方にも手を打っておかねばならない。
いろいろ手を打っていてもなお不安感はつきまとう。
現状のシステムを思い切って変えることに不安を感じない人はいない。
このときに「ドキョウ」を持たせてくれるのは「仲間」である。
同じ思いを持つ仲間集団をつくることで頑張ってみようという支えができる。
したがって、言い出し屋がドキョウを持つためには、仲間づくりの説得力と人間的魅力を備えなくてはならない。
「孤独な言い出し屋」はありえない。
車を今までの業界常識を超える高速で走らせようとした場合、そこではまったく新しい高速エンジンの開発が必要になる。
しかし現実に車のスピードを決めているのは「エンジン性能」ではない。
それは「ブレーキ性能」である。
いくらスピードの出せる高性能エンジンを開発しても、ブレーキが利かなかったら意味がない。
「万が一に備える」のはTの伝統である。
戦後の倒産危機の体験から、在庫を極力持たないキャッシュフロー経営を早くから実践し、お金は資産運用するよりも経営危機に備えて現金を常に潤沢に持つという財務体質を堅持している。
P.F・Dは『明日を支配するもの』という著書で、この言い出し屋を「チェンジリーダー」と呼んでいる。
チェンジリーダーとは『変化を機会としてとらえる者』である。
変化への活動も同じである。
常識はずれの目標を示されたときに人々はどう反応するかと言えば、「たしかにこれほど高い目標を本当に達成できれば、うちの会社は圧倒的に他社より優位に立てるでしょう。
しかし、この目標に挑戦するためのシステム変革のリスクはそれだけ高まるのに、どう対応するつもりですか」と激しく反論するか、無視するのが普通である。
そういう態度を変えさせるだけの「リスク対応力」(ブレーキ性能)を言い出し屋は持ち、説得して信頼を得られなければ「常識はずれの改善活動」に取り組むことは望めない。
つまり、どれだけリスク対応できるかメドをつけたレベルで言い出し屋の「ドキョウ」は決まる。
言い出し屋は強気一辺倒では成り立たない。
逆にブレーキ性能として「オクビョウ」(敏感)であることが資質として求められる。
事前のあらゆるリスクを想定し、その対応に全力を傾け、メドが立ったうえでみんなに常識はずれのテーマを投げかける。
「大胆にして細心」と言えば格好いいが、言い出し屋は人一倍に「オクビョウ」であるがゆえに、「ドキョウ」ができる、というのがKの実感である。
改善案の出し方には二つある。
一つは、現状の「知識・技能」をベースに考え、「問題点をつぶす」改善活動で少しずつよくする帰納法である。
もう一つは、最初から高い目標を掲げて、発想を変えて知恵を出すことで目標に限りなく近づく演鐸法である。
「段取り替え時間の短縮」という一般的な改善テーマを掲げれば、問題解決型の帰納法になるが、「三分段取り替え」という具体的な目標(コンセプト)で表現された改善活動を展開すれば、アイデアを出さなければ目標に近づけない演緯法になる。
業改善と呼ばれる。
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